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さんぺい聖監督 放送前ロングインタビュー公開です!

――まずは原作を読まれた時どんな感想を持たれましたか?

 

1巻を読んだ時は、どちらかと言えばコメディ色が強く、かわいい女の子たちがコンセプトカフェでワイワイする感じの作品かなと思っていました。ですが巻を追うごとにキャラクターたちの過去や心情が綿密に描かれ、関係性も深く厚くなっていく。かわいらしい中にも女の子たちの繊細なドラマがあるところがとても面白く、惹かれました。

 

 

――アニメ化するにあたり心掛けられた部分はどこでしょうか?

 

振り切ったギャグにはならないようにすることです。メインはやはりキャラクターたちの気持ちや関係性の部分。“かわいい”という要素はコメディタッチで描くとしても、彼女たちの本質、原作で大切にされている心の機微などはしっかり描こうと。またシリアスなシーンでは、ネガティブに見えないようにすることも重視しました。「カフェ・リーベ女学園」で働いている時、カフェでのキャラクターを演じつつも、本音をぶつけるシーンがあります。本音を伝える様子や強い口調が、見る人によっては“嫌なキャラクター”に感じてしまう場合もある。そういうシーンでは、セリフを含め視聴者の方が不快な気持ちにならないような演出を心掛けました。

 

 

――原作者の未幡先生とはどのようなことを打ち合わせされましたか?

 

原作とアニメでズレが生じてしまわないように、アニメ制作スタート時点ではまだ原作で描かれていないところ、特に陽芽の心情的な部分を聞かせていただきました。未幡先生は裏の設定までしっかりと考えられていて、それをお聞きできたのは大きかったです。直接的に描かなくとも、ちょっとした表情や仕草などに心情の機微を乗せられますし、知らないで描かないのと知っていてあえて描かないのでは違いますから。

また「カフェ・リーベ女学園」の資料も大量にお持ちでしたので、カフェの設定やお店の雰囲気などは原作を尊重しアニメに落とし込ませていただきました。ちなみに「カフェ・リーベ女学園」は、架空の小説“乙女の心臓”に登場するミッション・スクールをモデルにしていますが、アニメでは演出のひとつとして丘の上にある学園風景を描いたシーンを入れています。原作ではそこまで大きく登場していませんが、未幡先生にお願いをしてアニメオリジナル要素として承諾をいただきました。

 

 

――アニメ化あたって、この作品ならではだなと感じられた部分はありますでしょうか?

いろいろありますがキャラクターの演じ分けでしょうか。キャストの皆さんは、普段の時とカフェで働いている時のキャラクターを演じ分けなければいけないですし、陽芽、美月、純加の3人は、カフェとそれ以外で性格が違うので大変そうだなと(笑)。中でも陽芽は普段からソトヅラとカフェ用のソトヅラがあって、果乃子にしか見せない部分もあり、本音もある。陽芽役の小倉(唯)さんは、それをシーンによって細かく演じ分けられているのでとても感心しました。

 

 

――カフェで給仕をする5人についてお聞かせください。

 

陽芽は当初から“ソトヅラ”と言っていますが、基本は優しい子。ただ人のためを思って行動していても、時々の選択がそのシチュエーションには合わなかったり、悪い方向に繋がってしまったりする。また本人もその優しさの使い方を分かっていないんだろうなって。さらに言えば、素直に本音を言えない子でもあるので、深く入っていけなくて気まずくなってしまうこともある。でも芯はしっかり持っている。そこは外さないようにしました。

 

美月は自分の中で描くのが一番難しかったです。基本は素直な子ですが、空気が読めず言葉も表面通りしか受け取れない。言い換えればとても不器用なので、他人とぶつかってしまうんですよね。それが嫌なキャラクターに見えないよう気を付けました。ただカフェで綾小路美月を演じることで、自分にない部分が見えてくる。美月も含めカフェで働いている皆は、自分に足りない部分が役として与えられているのかなと思います。

 

果乃子も踏み込むと難しいキャラクター。一途という部分が嫌味に見えないように心掛けました。アニメ制作スタート当時、原作も今連載している内容までは描かれていなかったのですが、このままストレートに果乃子を表現したらホラーっぽくなってしまう。一途って突き詰めれば怖い側面もありますし、そこにスポットを当てて描いてしまうと作品感も壊れてしまいますから。なるべく果乃子の心情は表現しつつも、一線は越えないようにしました。

 

純加は原作を読んだ時に一番勘違いをしていました。最初はお姉さんに見えたのですが、実は年相応。もっと普通の女の子としてキャラクターを演じさせていいんだというのが、未幡先生との打ち合わせのあとで分かりました。また意外と自分の気持ちを押し殺すこともあり、陽芽とまた違った方向での優しさを持っているんですよね。

 

舞はつかみどころのないキャラクター。そもそもアニメ制作時には原作でも過去などについてあまり触れられていないですし、どこまで描くのか悩みました。ただ舞は大人で、皆の本心もちゃんと理解して、気を配りながら上手くお店をまわしているんだろうなと思います。

 

彼女たちは器用に見えて、みんな意外と不器用。カフェでキャラクターを演じていても、つい気持ちが出てしまうんです。そこはカフェに来ているお客さんが補正をして「カフェ・リーベ女学園」という空間を楽しんでいるということで、事なきを得ていますけれども、本人たちは真剣なんですよね。

 

 

――最後に、ファンの方に向けてのメッセージをお願いします。

 

「カフェ・リーベ女学園」で働いている時の“百合モード”と、心情や関係性が語られる日常の様子を上手く配分して描ければいいなと思っています。

この世界観で彼女たちの関係性や物語を楽しんでいただけると嬉しいです。